京都大学大学院法学研究科附属 法政策共同研究センター

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環境と法

研究の背景

私たちの日常生活の維持にとって、地域レベルから地球規模までの自然環境が守られていることは不可欠の前提です。しかし、人類の社会的・経済的活動の拡大は環境に負荷をかけ続けており、それが日常生活に跳ね返ってきた公害問題・地球環境問題への対応は、人類の持続可能な発展にとって喫緊の課題です。そこで、例えば政府の「持続可能な開発目標(SDGs)推進本部」が2030年までの行動計画として採択した「SDGsアクションプラン2020」(令和元年12月20日)においては、SDGsのための科学技術イノベーション(STI)として、研究開発成果の社会実装化の促進、及びバイオ戦略の推進による持続可能な循環型社会の実現の社会実装化の促進、及びバイオ戦略の推進による持続可能な循環型社会の実現などが目標として掲げられています。

研究の内容

環境と法・プロジェクトイメージかつて深刻化した公害問題とは異なり、1990年前後から顕在化した地球環境問題は、目に見える健康被害をもたらさないものの、持続可能な発展を実現するために対策が必要なものと考えられてきました。これに対して、近時顕在化してきた中国からのPM2.5等の汚染物質の飛来は、海を隔てた我が国においても越境環境汚染問題と無縁ではないことを強く認識させました。そこで本ユニットでは、地球全体の環境問題だけではなく、東アジアを中心とする環境問題、とりわけ大気・水に関する越境汚染に着目し、問題状況を把握した上で、解決に向けた法的・政治的なスキームを具体的に提案することで、越境環境汚染問題の解決に資することを目指します。

他方で、人類全体の持続可能な発展の実現との関係では、地球環境問題の解決とともに、地球規模での自由貿易体制が維持されることも重要です。ここで環境規制は、投資活動の自由を阻害する要因と位置付けられています。しかし、環境保護のためのあるべき法規制を考える場合、環境汚染の原因や因果関係に関する自然科学からの実証的分析を踏まえ、各国の国内規制のみならず、国際条約に基づく規制メカニズムや国際的な行政ネットワークによる規制連携のしくみと、国際的な投資活動の自由とを両立させる法制度を目指す必要があると考えられます。そこで本ユニットでは、「環境規制の国際的調整」と「投資活動の自由との調和」の2つの柱を立てて分析を行います。具体的には、一方では環境規制に名を借りた投資活動の妨害を抑制するための、他方では投資の自由を過大視する余り環境規制の実効性を欠くことを回避するための法制度設計を提示する必要があります。本ユニットは、この2つの問題の解決のため、既に利用が拡大している国際投資仲裁と環境問題の関係を実証的に分析することで、上述の課題に対応しうる法理論の構築を図ることを目指します。

ユニットリーダー紹介

原田大樹(京都大学法学系(大学院法学研究科)教授、行政法学)

伝統的に国家が担ってきた作用が民間部門に拡散し(複線化)、公共部門内部でもグローバルレベルからローカルレベルまで展開する(多層化)時代の行政法学のあり方を研究している。環境法分野もこの問題が顕著に表れる代表的な領域であり、これに関連する研究書として、『公共制度設計の基礎理論』(弘文堂・2014年)、『行政法学と主要参照領域』(東京大学出版会・2015年)、『グローバル化と公法・私法関係の再編』(共編著、弘文堂・2015年)、『政策実現過程のグローバル化』(共編著、弘文堂・2019年)、『公共紛争解決の基礎理論』(弘文堂・2021年)等がある。