京都大学大学院法学研究科附属 法政策共同研究センター

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環境と法ユニット 2023年度第1回研究会「環境法における正統化の問題」

研究ユニット:環境と法
開催日時:2024年1月27日(土)14時~16時30分
ユニットリーダー:原田大樹
作成者:原田大樹

概要:
2024年1月27日(土)に京都大学大学院法学研究科附属法政策共同研究センター・環境と法(科学研究費基盤研究Aとの共催)の研究会が開催された。まず,獨協大学法学部地域総合研究所特任助手の谷遼大先生から,「環境法における正統化の問題」と題する報告が行われた。その後,質疑応答の時間が設けられ,活発な議論が行われた。

報告内容:
○参加による正統化
参加は公法学において重要な要素とされているものの,その法的根拠は不明確である。ドイツの民主政的正統化論においては,参加との関係は直接には論じられていない。連邦憲法裁は正統化の方法について柔軟化の傾向を示しており,学説においても,法律による正統化の不足を参加で補う理論が目立つ。他方で,正統化の主体を多元的に理解した上で直接的な正統化を議論する見方も存在するものの,少数派に止まっている。
○行政裁判権の正統化
裁判権も国家権力に含まれる以上,その正統化が必要となるはずである。ここでは,個人の権利保護との結び付きに着目した正統化論が注目される。環境団体訴訟との関係では,環境法の固有の利害状況,とくに自然保護領域等における個人の権利・利益との結び付きの薄い拡散的利益の存在が重要である。そのような利益の性格を前提とすると裁判による統制がもともと困難であり,そこに数が限定され,選定された,高い専門性を持つ環境保護団体が存在することが,団体訴訟を許容する論拠となり得る。

主な質疑応答:
・「参加」と「利益」の関係をどのように把握・理解すべきか。
・議会を経由しない正統化ルートを構想することはできるか。ヨーロッパ化はドイツの国内公法学における正統化の議論にどの程度影響を与えているか。
・ドイツ固有の「正統化」の議論を日本の解釈論にどのように位置づけるべきか。
・環境団体訴訟の問題は,正統化の議論よりも,制度設計論や規範的な根拠付けの問題として論じるべきではないか。
・デジタル化やグローバル化の状況下において,「参加」の法的意味は変化しうるか。