京都大学大学院法学研究科附属 法政策共同研究センター

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アジャイル・ガバナンス シンポジウム3rdの議事録を掲載しました。

研究会名等:アジャイル・ガバナンスシンポジウム3rd(1日目)
研究ユニット:人工知能と法
開催日時:2024年4月6日(土)13:00~17:30
ユニットリーダー: 稲谷 龍彦(京都大学大学院法学研究科教授)
作成者: 陸 新超(京都大学大学院法学研究科附属法政策共同研究センター特定研究員)(Session 1・2)
     生田 裕也(京都大学大学院法学研究科附属法政策共同研究センター特定助教)(Session 3) 

概要:2024年4月6日(土)に京都大学大学院法学研究科附属法政策共同研究センター「人工知能と法」ユニット主催(信州大学社会基盤研究所との共催)の「アジャイル・ガバナンスシンポジウム」1日目が開催された。

○Session 1 Agile Governance Update 
・登壇者:羽深宏樹氏(京都大学/スマートガバナンス株式会社)、稲谷龍彦氏(京都大学)、淺井顕太郎氏(オーストラリア国立大学/京都大学)、目黒麻生子氏(経済産業省商務情報政策局国際室、欠席)、渡部友一郎氏(Airbnb Japan株式会社/日本組織内弁護士協会)
・概要:「Agile Governance Update」と題するセッションが行われた。
・内容:はじめに、アジャイル・ガバナンスの中身と近年の発展、技術発展によるリスクマネジメントへの挑戦、そして高頻度データを用いた企業不正の発生要因特定が紹介された。その後、ディスカッションにおいては、アジャイル・ガバナンスにおけるルール形成や、責任制度等によるインセンティブ付け、企業不正の隠蔽への制度的対応、アジャイル・ガバナンスの制度と日本との適合性などが扱われた。最後に、質疑では、企業側にとってアジャイル・ガバナンスのドライビングフォースの所在について議論がなされた。

○Session 2 Corporate Culture and Governance
・登壇者:深水大輔氏(長島・大野・常松法律事務所/信州大学)、Lorinda Laryea氏(U.S. Department of Justice)、Jennifer Arlen氏(New York Univ.)、Daniel Kahn氏(Davis Polk)、Eugene Soltes氏(Harvard Univ.)、Simon Airey氏(McDermott Will & Emery)
・概要:「Corporate Culture and Governance」と題するセッションが行われた。
・内容:最初に、コンプライアンス違反を引き起こすメカニズム、企業コンプライアンスにおける中間管理職の姿勢(tone in the middle)の重要性、そして倫理規範が実際に会社の環境に浸透することの必要性が示された。次に、報酬体系と企業コンプライアンスとの関連付けや、企業文化による倫理感、他者や社会に対する責任感の強化、企業マネジメントと社会文化との調和などの具体策が取り上げられた。最後に、日本における「Speak Up文化」の欠如とその克服をめぐって、検討が行われた。

○Session 3 CPSと人とのインタラクション:アジャイル・ガバナンスの新たな適用領域について
・登壇者:浅田稔氏(大阪国際工科専門職大学/大阪大学先導的学際研究機構)、岡田美智雄氏(豊橋技術科学大学)、栗原聡氏(慶応義塾大学)、上出寛子氏(名古屋大学/京都大学)、山下徹哉氏(京都大学)
・概要:「CPSと人とのインタラクション:アジャイル・ガバナンスの新たな適用領域について」と題するセッションが行われた。
内容:サイバー空間とフィジカル空間が高度に融合したサイバー・フィジカル・システム(CPS)の領域が拡大する状況下における、CPSやロボットと人とのインタラクションをめぐる諸問題について議論が行われた。まず、各登壇者からは、人間の認知発達過程をロボットを使って解決しようとする認知発達ロボティクスにおける身体性と社会的相互作用について(浅田氏)、人間の自立性や創造性を奪わないロボットとの自立共生的なかかわりを目指す〈弱いロボット〉研究について(岡田氏)、スケールによってAIが進化する中における人と共生するAIへの信頼と判断の委任について(栗原氏)、日本と西洋の間におけるロボットの見方の相違や人とモノとのインタラクションの背後にある認識について(上出氏)、それぞれ議論が紹介された。その後、モデレーターの山下氏の進行の下で、人とAIの信頼関係の構築、人とロボットのインタラクションにおけるプロセスやリスク等について活発に議論が交わされた。

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研究会名等:アジャイル・ガバナンスシンポジウム3rd(2日目)
研究ユニット:人工知能と法
開催日時:2024年4月7日(日)10:00~13:50
ユニットリーダー:稲谷 龍彦(京都大学大学院法学研究科教授)
作成者:田中 悠美子(京都大学大学院法学研究科附属法政策共同研究センター特定助教 )

概要:2024年4月7日(日)、京都大学法政策共同研究センターと信州大学社会基盤研究所が主催し、NPO法人軽井沢先端学術センターと長島・大野・常松法律事務所が協賛するシンポジウムが開催された。本シンポジウムは、対面方式(京都大学会場)とオンライン方式を併用して実施された。 

○Session 4   経済安全保障とリスク管理
・登壇者:玉井 克哉(東京大学/信州大学)、中谷 昇(LINEヤフー株式会社)、湯浅 諭(経済産業省 大臣官房経済安全保障室)、島田 学(日本経済新聞社)
・概要:湯浅氏による「経済安全保障に係る産業・技術基盤強化アクションプランについて」と題するプレゼンテーションと玉井氏による「経済安全保障と政府ガバナンス~スマートフォン用ソフトウェアに係る『競争促進』をめぐって~」と題するプレゼンテーションが行われ、それらをもとにした議論がされた。司会は玉井氏が担当した。
・内容: 湯浅氏のプレゼンテーションでは、経済安全保障に関する産業・技術基盤を強化するための取組みを推進する上で欠かせない官民の戦略的対話についての今後の方針が紹介された。質疑では、技術や外資の管理の必要性やデータ保護の必要性等が指摘された。玉井氏のプレゼンテーションでは、サイドローディングの問題、とりわけ、OS事業者ではない者が運営するアプリストアを通じてアプリをダウンロードできるようにすることの問題点が紹介された。質疑は、日本の政策形成の構造においては産業横断的な規制を推進することが難しいという状況をめぐる議論が中心となった。 

○基調講演  世界の経営学からみるアジャイルガバナンスへの視座
・登壇者: 入山 章栄(早稲田大学)
・概要:入山氏から、「世界の経営学からみるアジャイルガバナンスへの視座」と題する講演が行われた。
・内容:経営学の視点からは、これからの時代において、ガバナンスを考える際には、経済学のみならず認知心理学や社会学を取り込むことが求められる。そこで重要なのは次の二点である。第一に、「我々は何もわかっていない」という前提に立つ必要がある。そして、知を探索すること、失敗を受け止めること、多様性を重視することを通じて常識を恒常的にアップデートすることが求められる。第二に、これからの世界はネットワーク型であるため、自立分散的なティール組織が現れる。それは、ソーシャルキャピタル的であるため、ブロックチェーンに適合する。このような組織のガバナンスで重要なのは、思想に基づくシンプルルール、透明性、組織を終わらせるという視点である。

○Session 5:Governance by Innovation
・登壇者: 御代田 有恒(森・濱田松本法律事務所)、鍛治 美奈登(キリンホールディングス株式会社)、梅村 昌嗣(パナソニック ホールディングス株式会社)、富安 啓輔(株式会社FRONTEO)、松﨑 尚子(あずさ監査法人)、Vincent Walden(Kona AI)
・概要:まず、司会の御代田氏の質問に登壇者らが回答することを通じてテクノロジーによるガバナンスをめぐる課題が整理された。そのうえで、Vincent氏による「Making the Business Case For Use of Technology」と題するプレゼンテーションと富安氏による「Technology changes coopoerate governance」と題するプレゼンテーションが行われ、それらをもとにした議論がされた。
・内容:まず、プレゼンテーションの前提として、テクノロジーを用いてコンプライアンスやガバナンスを行うことの必要性が確認され、さらに、その際にはどのような課題があるのかが整理された。主な課題は、新しいツールと既存のITシステムをどのように接続するのか、蓄積したデータをどのように解釈・分析するのか、データや組織が縦割りであること、リソースが不十分であること、データへのアクセス権を誰に与えるのかである。Vincent氏のプレゼンテーションではKona AI社のツールが、富安氏のプレゼンテーションではFRONTEO社のツールが紹介された。