センターの概要
法政策共同研究センターの設立目的
法政策共同研究センターは、科学技術の進歩と急速なグローバル化・地球環境の変動などに伴って生じる社会システム全体のパラダイムシフトに対応するために、先端的な法政策課題について理論と実務が協働して学際的・国際的研究に取り組み、誰一人取り残さない、人間を主体とするイノベーションの実現を支える法政策構想を提案するとともに、新しい学術領域の開拓とその独創的な担い手の養成を推進することを目的としています。このような目的を達成するために、法学・政治学の既存研究領域に収まらない多様な人材を確保し、国際的な共同研究を推進し、その研究成果を教育へとフィードバックすることができる柔軟で機動性に富んだ組織を構築する必要があるとの認識から、国際法政文献資料センターと法政実務交流センターを発展的に解消・改組し、2021(令和3)年度に本センターが設立されました。
法政策共同研究センターの活動
先端的な法政策課題に挑戦する京都大学大学院法学研究科に附属する本センターは、①文理融合を含む学際的な教育・研究、②国際的な共同研究・発信、及び③研究者と実務家の共同研究・教育等に取り組みます。現在、AIなど人類社会にとって全く新しい科学技術の開発や未知の感染症の出現などに伴って生じる社会システム全体のパラダイムシフトがまさに生じつつあり、それに対応する先端的な法政策課題に取り組み、国際ルール・国際標準の構築等に向けて先導的な役割を果たすことが喫緊の課題となっています。本センターは、このように従来の法学・政治学の枠を超えて、科学技術の発展等が社会にもたらす変化を広く対象とし、それに対応する法制度の社会実装を目指す点で、他に類を見ないものと言えます。
法政策共同研究センターの組織構成
法政策共同研究センターは、センター長により主宰されるセンター運営会議を中心に、セクションとユニットという2つの組織単位から構成されています。
セクションは、教員所属組織であり、教育活動のための組織です。センターには3つのセクションが設置されています。法文化国際研究セクションは、自然科学を含む隣接諸科学や産業領域との連携や国際共同研究の推進を目的とする組織であり、法学研究科と兼任する研究者教員9名及び法学研究科の協力教員もこの活動に従事します。さらに、センターの研究活動に携わる3名の特定助教、1名の特定研究員が所属し、研究会の運営等にも携わります。政策実務教育支援セクションは、国の立法・行政・裁判実務あるいは企業法務との連携を促進し、法科大学院や公共政策大学院等における実務教育を支援するための教員組織であり、法曹実務家教員(専任4名、法科大学院特別教授6名)、客員教授(法曹・行政実務)、フェロー・協力研究員等が所属します。文理融合実証研究セクションは、法政策に関する実証的な方法論に基づく研究を推進するもので、数理法学・実験法学・フィールドワーク法学・設計法学の専門家が所属します。
ユニットは研究活動の単位であり、センターが取り組む課題によってさまざまなユニットが設定されます。現在は、4つのユニットがセンターに置かれています。人工知能と法ユニットは、人工知能(AI)が引き起こす社会の変化に対応する法制度の設計について、心理学的実験や文化人類学的調査、人工知能を利用したテクストマイニングなどの学際的・国際的な共同研究を踏まえた実証研究の成果に基づいて、実務の必要性に即した政策提言を示し、英語書籍の出版等を通じて広く発信することを目指しています。医療と法ユニットは、新型コロナウイルス感染拡大への対応で得られた国内外の学術的・実務的知見を踏まえて、新生活様式を可能とする法的環境整備や、医療・診療情報の管理・活用のための法制度設計を提案し、ポスト・コロナ社会の医療を支えることを目指しています。環境と法ユニットは、環境規制の国際的調整と国際投資活動の自由について、学際的・国際的な共同研究を通じて、実証的な問題分析を踏まえ、汚染物質の越境移動の抑制と投資活動の自由を両立させる法理論を構築し、国内・国際政治過程を規律する法的フレームワークを提言することを目指しています。
少子高齢化社会と法・政治ユニットでは、政治・行政学と法学の観点から少子高齢化にかかわる問題群を検討し、持続可能な社会保障制度のあり方、家族にかかわる諸制度の将来像、政治・行政の政策選択肢と支持調達について明らかにすることを目指しています。
副センター長紹介
待鳥聡史(京都大学法学系(公共政策連携研究部)教授、比較政治・アメリカ政治)
1971年生まれ。1993年京都大学法学部卒業。京都大学大学院法学研究科修士課程を経て、ウィスコンシン大学(アメリカ)で修士号、京都大学で博士号を取得。大阪大学助教授などを経て、2007年から京都大学大学院法学研究科教授。2012~15年、2020年~現在は公共政策大学院に所属(大学院法学研究科・法学部兼担)。この間、カリフォルニア大学サンディエゴ校(アメリカ)にて在外研究。
アメリカ学会清水博賞(2003年)、サントリー学芸賞(2012年)を受賞。Social Science Japan Journal国際編集委員。
単著として、『財政再建と民主主義』(有斐閣、2003年)、『首相政治の制度分析』(千房書房、2012年)、『代議制民主主義』(中公新書、2015年)、『政治改革再考』(新潮新書、2020年)、など。
『日本の地方政治』(曽我謙吾と共著、名古屋大学出版会、2007年)、『比較政治制度論』(建林正彦・曽我謙吾と共著、有斐閣、2008年)、『「憲法改正」の比較政治学』(駒村圭吾との共編、弘文堂、2016年)、『社会のなかのコモンズ』(宇野重規との共編、白水社、2019年)など。
論文として、”The Last Two Decades in Japanese Politics:Lost Oppoutunities and Undesirable Outcomes” in Yochi Funabashi and Barak Kushner (eds.) Examining Japan’s Lost Decades (London: Routledge, 2015): “Intellectual Origins of Post-1990 Political Reforms in Japan” in Kazuhiro Takii (ed.), The Lost Two Decades and the Transformation of Japanese Society (Kyoto: International Research Center for Japanese Studies, 2017)など。