研究活動
数理法学
研究内容
個々の主体が自己にとって最適な意思決定を行うことで、市場の見えざる手を通じて集団的にも望ましい結果が実現できることは経済学の古典的な定理の一つである。しかし、意識的・無意識的にかかわらず、個々の主体は最適な行動をとれていない場合があり、たとえ個々の主体が最適な行動をとれていたとしても、集団的には望ましくない結果を引き起こすことが往々にしてある。この現象にはさまざまな心理的要因や社会的環境が影響を及ぼしており、その行為の背後に存在する要因を探求している。具体的には、以下の4つの主要な課題について現在研究活動を進めている。
1.共通投資家を媒介とする企業間ネットワークの反競争的効果に関する研究
共通株主や共通債権者が企業間の競争を抑制する可能性を分析している。
2.企業の統治構造・企業金融に関する研究
企業の役員構成、資本構成、人事制度が企業のパフォーマンスやリスクテイクに与える影響と法政策の関連性を分析している。
3.協調の失敗・情報の非対称性に主眼を置いた金融危機に関する研究
経済主体間の協調の失敗が金融危機を引き起こすことは古典的に知られているが、情報の非対称性がその発生に与える影響や、パニックを抑制する要因を分析している。
4.情動が個人の意思決定と市場の効率性に及ぼす影響に関する研究
情動の存在が個人の最適行動を妨げ、集団に非効率的な結果をもたらすことはよく議論されているが、情動の存在がむしろ市場の効率性を担保している可能性について探求している。
主要業績
2024年
- Kentaro, A., Hoang T., & Yamada, T. (2024). Common lender, ex-banker director, and corporate investment. Journal of Financial and Quantitative Analysis, 59, pp 3959-93.
- Kentaro, A. (2024). Bank lobbying as a financial safety net: Evidence from the postcrisis U.S. banking sector. Review of Corporate Finance Studies, 13, pp 739–74.
- Kentaro, A., & Charoenwong, B. (2024). Ownership networks and bid rigging. SSRN WP, 3298152.
- Kentaro, A., & Inatani, T. (2024). Economic analysis of corporate non-monetary sanctions. SSRN WP, 5005837.
- Kentaro, A. (2024). Incomplete information, self-confidence, and positive sorting. Mimeo.
2023年
- Kentaro, A., & Choi, D.B. (2023). Debt-equity conflicts and efficiency of distressed firms: Evidence from Japanese banker-directors. SSRN WP, 4150195.
- Kentaro, A., Grundy, B., & Izumi, R. (2023). Opacity, signaling, and bail-ins. SSRN WP, 4396051.
実験法学
研究内容
日本で創始されたロボット・コンテストには、「ものづくりは人づくり」という標語があり、モノとの真摯なインタラクションを通じて、人の心が育つことが報告されている。モノと人が相互に繋がり合うという価値観が日本の文化的な特徴であり、これまで日本人を対象とした研究では、日常的なモノとのやり取りの中に、人がモノを大切に扱う「ケア」の側面と、モノとのインタラクションを通じて人が「学び」を得る側面があることが明らかとなった。これらの2側面は、モノとの一体感やよ個人のwell-beingと関連することが示されている。人工知能やロボットは社会に参入しつつある新規な存在である。今後、文化的な視点を取り入れた上で、様々なモノや先進技術、人との心理的関係性を明らかにする。
主要業績
2025年
- Kamide, H., Horikawa, Y., Sato, M., Toyoda, A., Sakai, K., Minato, T., Miyashita, T., & Ishiguro, H. (2025). A comparative psychological evaluation of a robotic avatar in Dubai and Japan. Frontiers in robotics and AI, 11, 1426717.
- 草野 智, 福原 悠介, 原 進, 満倉 靖恵, 上出 寛子, 脳波計測によるストレス解析のための実機とCGのドローンにおけるディスクレパンシー評価, 次世代移動体技術誌, 2025, 6巻, 2号, p. 2-11.
2024年
- 上出 寛子, 谷川 民生, 新井 健生, 移動支援ロボットを用いた社会的マルチタスクによる高齢者の認知・身体機能の支援, 日本ロボット学会誌, 2024, 42巻, 6号, p. 592-595.
- Kamide, H., & Arai, T. (2024). Human-object interaction, connectedness with nature, and life satisfaction: a cross-sectional study. Frontiers in psychology, 15, 1360518.