概要
研究の背景
産業革命と情報革命がもたらした分業化とライフスタイルの多様化は、自律的なエージェントが多方向に繋がる組織と社会を生み出している。また、エージェントには従来から存在する個人や法人に加え、AIや自律型ロボットが含まれるようになりつつある。その結果、エージェント間の利害対立、情報の非対称性、エージェント間の相互依存性といった課題が複雑化し、自己利益の追求や情報共有の不全、協調の失敗が組織や社会の効率性を妨げるリスクを高めている。他方、個人や法人とAIや自律型ロボットとの相互作用は、従来考えられていたエージェント間のものとは異なる効果を生む可能性がある。文理融合実証研究セクションでは、このような複雑化した現代の組織や社会の効率性に関する仮説を学際的な知見に基づいて立案し、実験、実証、シミュレーションを通じて検証し、新たな法政策の提案に貢献することを目的としている。
研究概要
数理法学
ミクロ経済学、法の経済分析、ファイナンス、統計学などの分野に精通することは、論証と実証が求められる現代の組織運営において必要不可欠なものとなりつつある。数理法学は、これらの分野に基づく仮説の立案と検証を社会が直面する課題に応じて実践することで、新たな法政策の提案に貢献することを目指している。
実験法学
実験法学は、個人の推論スタイルや認知様式が社会文化と再帰的に影響し合う関係に着目し、実験や調査を通じてそのダイナミズムを解明する取り組みである。社会と関わる人間の心理学的知見を法制度の設計に活かし、公正で機能的なルール作りに貢献することを目的としている。
セクションマネージャー紹介
淺井顕太郎(京都大学法学系(大学院法学研究科附属法政策共同研究センター)教授)
シカゴ大学学士・修士・博士課程修了。B.A. with Honors, M.A., Ph.D.(経済学)。ゴールドマンサックス証券投資調査部、Japan-IMFスカラシップ・プログラム奨学生を経て、2016年よりオーストラリア国立大学経済・ビジネス学群で教鞭をとったのち、2024年より京都大学大学院法学研究科教授。研究領域は、企業・産業組織、金融仲介機能、行動科学、法と経済等。多様な反実仮想の枠組みを用いて、組織や市場の効率性に関する研究を行っている。
スタッフ紹介
上出寛子(京都大学法学系(大学院法学研究科附属法政策共同研究センター)特定准教授)
大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程修了(博士(人間科学))。大阪大学大学院基礎工学研究科特任助教、東北大学電気通信研究所助教、名古屋大学未来社会創造機構特任准教授を経て、京都大学大学院法学研究科附属法政策共同研究センター特定准教授。研究領域は、社会心理学の手法を用いて、Human-Robot-Interactionや人工物と人とのインタラクションに関する研究を行っている。