京都大学大学院法学研究科附属 法政策共同研究センター

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アジャイル・ガバナンス シンポジウム4thの議事録を掲載しました。

アジャイル・ガバナンス・シンポジウム 4th 1日目

1 概要
・開催日時:2025年4月4日(金) 11時00分~17時00分
・会場:ステーションコンファレンス東京(サピアタワー)5階
・形式:ハイブリッド

2 Session 1
(1) 登壇者
 深水 大輔氏 (長島・大野・常松法律事務所/信州大学)
 Daniel S. Kahn氏 (Davis Polk)
 Lisa Osofsky氏 (AlixPartners)
 Simon Airey氏 (McDermott Will & Emery)

(2) 内容
 第1セッションのテーマは「証拠に基づいたガバナンス(Evidence-Based Governance)」であった。はじめにモデレーターの深水氏より、コンプライアンスプログラムの有効性や、その評価に証拠を用いる必要性について説明があった。続いて、アメリカおよびイギリスにおけるコンプライアンスプログラムの展開状況について、各登壇者から報告がなされた。その後、合理的な不正防止手続のあり方や、コンプライアンスプログラムを効果的に運用する方法について、具体的な事例をもとに議論が行われた。最後に、日米英の文化的背景の違いを踏まえたうえで、各国に適したコンプライアンスプログラムの在り方について意見が交わされた。

3 基調講演
(1) 講演者
 名和 高司氏 (京都先端科学大学/一橋大学ビジネススクール)
(2) 内容
 基調講演のテーマは「エシックスの時代 〜シン日本流経営に向けて〜」であった。これまでパーパス経営(自社の存在意義を明確にして、社会に貢献する経営)が注目されてきたが、近年ではエシックス(倫理)の重要性が一層高まっている。企業経営においてはコンプライアンスが当然重要であるものの、それだけでは十分ではなく、内発的・内面的な倫理観、すなわちエシックス(あるいは、インテグリティ)が不可欠である。このような背景から、グローバル企業のみならず日本企業においても、ルールベースからプリンシプルベースの経営へ移行が進んでいる。こうした経営を実現するには、リーダーにはIQ(知能指数)やEQ(感情知能)に加え、JQ(判断力指数)が求められ、S3 Thinking(System, Spiral, Spiritual)を鍛える必要がある。

4 Session 2
(1) 登壇者
 池田 雄一氏 (PwC Risk Advisory LLC)
 Vincent Walden氏 (Kona AI)
 Eric Robinson氏 (KLDiscovery)
 Cliff Lam氏 (AlixPartners)
 Matt Galvin氏(U.S. Department of Justice)

(2) 内容
第2セッションのテーマは「テクノロジーを活用したリスク管理(Risk Management Using Technology)」であった。モデレーターの池田氏は、リスク管理におけるテクノロジー、特にAIの活用について、以下の4つの観点――①リスク評価、②データ分析、③データ調査、④改善――から議論を進めるよう登壇者に促した。
①リスク評価については、企業ごとにリスク許容度が異なるため、自社に適したテクノロジーを選定する必要があること、
②データ分析については、規制当局向けではなく、ビジネス(特にCFO)に資する分析が重要であること、
③データ調査については、AIの導入が検討されるものの、場合によっては過大なコストを招く可能性があること、
④改善については、新たなテクノロジーの登場により、従来に比べて低コストでの改善が可能になっていること
これらの点がそれぞれ指摘された。

5 Session 3
(1) 登壇者
 湯浅 諭氏 (長島・大野・常松法律事務所)
 玉井 克哉氏 (東京大学/信州大学)
 中谷 昇氏 (日本電気株式会社)
 伊藤 隆氏 (元 三菱電機株式会社)

(2) 内容
 第3セッションのテーマは、「経済安全保障の最前線」であった。冒頭ではモデレーターの湯浅氏より、経済安全保障をめぐる米国・欧州・中国の主な動向についての概要が示された。続いて、登壇者から、経済安全保障の本質が国家安全保障にあること、権力行使への抵抗感に起因する、大学や企業における技術情報の流出対策の遅れが指摘された。そのうえで、技術情報の流出の厳罰化、セキュリティクリアランス制度の導入や官民連携の重要性、そして企業におけるリスクマネジメントの必要性について意見が交わされた。


2日目

概要:
2024年4月7日(日)、京都大学法政策共同研究センターと信州大学社会基盤研究所が主催し、NPO法人軽井沢先端学術センターが協賛するシンポジウムが開催された。本シンポジウムは、対面方式(京都大学会場)とオンライン方式を併用して実施された。

シンポジウムの内容
○Session 4: Agile Governance Update
・登壇者:羽深宏樹(京都大学/スマートガバナンス株式会社)、山下徹哉(京都大学)、高橋久美子(三菱総合研究所)、渡部雄一郎(Airbnb Japan株式会社)、淺井顕太郎(京都大学)
・概要:まず、羽深氏によりAgile Governanceの概念の確認が行われるとともに、各登壇者から、各自の研究・職務内容とAgile Governance・Data Drivenの関係について紹介された。その後、羽深氏が各登壇者の紹介内容を要約するとともに、淺井氏・山下氏・渡部氏が付加してそれぞれの観点からコメントをした。
・内容: 様々な背景・立場をもった登壇者により、各々の研究・職務内容が紹介されたが、想像に基づくガバナンス・ゼロリスクガバナンス・透明性やバランスの欠いたガバナンスに対してどのようにデータを利用してアプローチするか、といった点が共通項として挙げられる、と羽深氏が要約した。淺井氏からは対人的協調の重要性が言及された。山下氏は、ゼロリスクガバナンスへの対応について言及した。山下氏からの発言を受けて、渡部氏・髙橋氏はリスクの打破のためのアプローチについて述べた。

○Session 5:Human – Non – human Interaction Updated
・登壇者: 上出寛子(京都大学)、浅田稔(大阪国際工科専門職大学/大阪大学)、柴田高広(京都大学/三菱総合研究所)、Phillip Morgan(Cardiff University)、稲谷龍彦(京都大学)
・概要:浅田氏・柴田氏・Morgan氏・稲谷氏がそれぞれプレゼンテーションを行い、それに対して上出氏がそれぞれコメントを行った。その後、上出氏らからのコメントに対応するかたちで議論がなされた。
・内容:浅田氏のプレゼンテーションでは、ロボット設計とAgilie Governanceの関係が議論された。柴田氏はAIやロボットと人間の交流やそのGovernance等について議論された。Phillip氏は「Sharing the World with Automated & AI Things」と題して報告を行った。稲谷氏はロボットと人間の共生に関してその可能性・問題・方法等について報告を行った。その後、ロボットやAIが倫理や感覚を持つ可能性などについて議論がなされた。

○Session 6:New Issues to Be Addressed
・登壇者:稲谷龍彦(京都大学)、羽深宏樹(京都大学/スマートガバナンス株式会社)、広瀬貴之(京都大学/JAMSS)、Indra Spiecker(University of Cologne)、陳冠瑋(京都大学)
・概要:広瀬氏・羽深氏・陳氏・Spiecker氏がプレゼンテーションを行い、それに対して稲谷氏がそれぞれコメントを行った。また、登壇者同士の意見交換も行われた。
・内容:広瀬氏はResilience engineeringや社会技術システム、FRAMを紹介し、システムの変化に対するアプローチについて報告を行った。羽深氏は、製品・サービス・オペレーターに対する認証だけでなく、マネジメントシステム認証などの組織に対して適用される認証の存在について紹介し、その基準について問題提起を行った。陳氏は、デジタル立憲主義とデジタル民主主義による法体系への変化とそれらに対するAgile Governanceによる影響についてプレゼンテーションを行った。Spiecker氏はAIを利活用した法律の影響のモニタリングについてプレゼンテーションを行った。また、登壇者同士の意見交換も行われた。

○閉会挨拶
・登壇者:稲谷龍彦(京都大学)